さて、靴下は二重に。使い掛けのキャンドルといつものガソリンストーブと、こういう日に飲もうとたまたま見つけて買っておいたお茶を持って、しおんにお留守番を託す。
玄関から出る前にもう一つ重要な、特に重要なことがある。それは自分のこだわりでもあり儀式でもあり、結局はどうでもよかったりするものでもある。はっきり言えばどうでもいい。
靴を履く前に自分はもう一度振り返り、寒いもう一つの部屋の中からそのどうでもいい今日の音楽を決めないといけないのだ。対照的に景色と自分が位置することを示す電波探知機として、持って行く音楽を決めないといけないのだ。
TARシリーズのcianにするかNico Muhlyにするか。ああああー。ほんとどうでもいいー。でもこれは自分のこだわりでもあり、このこだわりこそが玄関から出る自分の姿を唯一のものにする。Nico Muhlyに決めた。今は誰の足跡でもすぐに分かるくらいの深夜。シナリオがあるかのような曲はすべて飛ばす予定。音楽に媚を売られているようなものほどクソッタレなものはない。
帰ってきた自分に宛てるメモをキッチンに張っておく。
「部屋を片付けなさいな」
まぁだいたい無視するけど。
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